こんにちは、ひかりんパパです。
先日、仕事の帰り道、座席に座ってちょっとウトウトしていました。
隣には道着を着た少年が座り、その前に同じ道着を着た少年が立っています。道着には都立中高一貫教育校の名前が刺繍されていました。座った少年は多分中学1年生、立っている少年は高校1〜2年生くらいです。
立った少年が、座った少年に自宅学習のやり方にアドバイスしています。
「答えを赤系のペンで書いて」と言っていたので、きっと赤いシートをかぶせて暗記しているのだと思います。30年前と暗記方法に大きな差はなさそうです。大きなターミナル駅で座った少年が降り、代わりに立っていた少年が座りました。
電車のドアが閉まったタイミングで少年が席を立ち、近くの高齢女性に席を譲りました。
座っていた少年と高齢女性双方に気を使い、精神的に成熟している印象を受けました。また、このような生徒が通う都立中高一貫校はどんな学校だろうと思案していたところ、少し前に読んだ「中学受験/横山増生著 岩波新書」を思いました。
子供に公立中高一貫校を受検させることを考えている人
目次
1.「中学受験/横山増生著」とは?
セールスコピーやamazonの評価では、私立中学受験の裏を暴いたと表現されています。
確かに私立中高一貫校、私立大学付属校のマイナス面が中心に描かれています。それは、私立中高一貫校が楽園のように描かれている記事や、ニュースを多く目にした著者が、突入取材精神を発揮させた結果でしかありません。「ジャーナリズムは基本的に反体制」という言葉を思い出します。
著者は自身の子供に私立中学を受験させようとして悩みます。
私立中学受験生を持つ当事者として取材にあたっていますが、著者は地方の出身で私立中学受験の経験がありません。良かれと思って幼いうちから子供を塾に通わせます。私立中学受験を目指していましたが、お子さんの体調不良(ストレス?)が重なり塾通いを辞めます。
著書は2013年12月に発行されています。
その後の6年間で、都立中高一貫教育校の躍進、公立中学の復権がありました。また、マンガ「二月の勝者 -絶対合格の教室-/ビッグコミック スピリッツ連載」が人気となり、中学受験の産業化(飯のタネにしている)の現状を知られる機会が増えました。少子化が続く中、私立中高一貫校、私立大学付属校は生き残りをかけて必死です。
2.ひかりんパパが「中学受験/横山増生著」を読んで参考になった点
2-1.小学校の塾代、中高の学費だけでは足りない
私立中高一貫校に進学したら、それ以降、塾に通う必要はないと思いがちです。
ところが、東大生を多く輩出する私立中高一貫校の場合、入学した直後に「今度は東大」と塾通いが続きます。今度は6年間です。いったいいくらお金がかかるのでしょうか?
2-2.私立中高一貫校からのドロップアウト
私立中高一貫校の経営は、難関大学への進学率次第の面があります。
良い実績を残せば、学力の高い生徒が集まり、さらに難関大学への進学率が上がる好循環になります。ところが、難関大学への進学率が下り始めると、学力の高い生徒が集まらず、学校経営を直撃します。そのため私立中高一貫校の多くは、高校からの生徒募集を打ち切り、中学生への前倒し授業を実施、大学受験の早期準備に注力します。
私立中高一貫校が望まない生徒はどうなるのでしょうか?
残念ながら退学していくケースが多いです。学校でトラブルを起こした場合は辞めるように仕向けられるでしょう。また、難関大学合格だけを目標に過ごすことに息苦しさを感じた場合、自分の意思で退学(転校)を選ぶこともあります。
2-3.「いじめ」の存在
ひかりんパパの経験を少しお話しします。
公立小学校、公立中学校を経て、進学校と呼ばれる都立高校へと進学しました。公立小学校と公立中学校ではいじめがありました。いじめに加担したこともありますし、いじめられたこともあります。
高校に進学すると、いじめを目にする機会がなくなりました。
学力が高く、精神的に成熟している生徒が多かったからかも知れません。いじめようとしている生徒に、「やめろ」と正面から指摘する生徒を目撃したこともあります。断定はできませんが、高校でいじめはなかったと思います。
公立学校で「いじめ」が発生した場合、学校から教育委員会へ報告、解決を図ります。
私学は教育委員会の管轄下に入っていないため、校長、理事長が問題の処理を行います。
あとは、私学が問題に取り組む気があるかどうかです。学力が高く、生活環境の良い生徒が集まりますので、公立中学校と比べればいじめの件数は少ないでしょう。でも、「いじめがない」訳ではありません。
実際、青山学院中等部でいじめと呼ぶには深刻すぎる暴行事件が発覚しました。
男子生徒が女子生徒の制服を剥ぎ取り、その様子を動画で撮影するといった事件です。問題の大きさに対して、処分の甘さと情報公開が不足した青山学院中等部では、受験者を約4割弱減らしました。
2-4.公立中学校から優秀な生徒が消えた
私立中学を受験、私立中高一貫校に通わせることは家計の大きな負担です。
両親が高収入であれば、子供の中学受験に十分投資ができます。私立中高一貫校へ通わせながら、大学受験塾へも通わせることができるでしょう。
高収入ではない両親の元に生まれた、優秀な子供の場合はどうでしょうか?
以前は地元の公立中学校に通うことが一般的でした。ひかりんパパ、ひかりんママも公立中学校の出身です。
ところが、公立(都立、区立)の中高一貫教育校が設置されたことで状況は大きく変化しました。両親が教育熱心、子供が優秀な場合、公立中高一貫教育校に進学し、地元の公立中学校へ進学しなくなったのです。学費を抑えながら良い教育を受けられると人気になっています。
公立中学校から、学業優秀、リーダーシップのある生徒が消えました。
公立中学校で起こっている問題は少し深刻です。リーダーシップのある生徒がいないため、運動会や合唱コンクールなどのイベントの度に、教師がひとつひとつ指導しなければならない状況が生まれ、生徒が自由と自己責任のバランスを経験する機会が減っています。
優秀な生徒がいなくなった教室では、平均的な学力に合わせた教育指導が行われます。
ここで言っている平均は、私立中学を受験する生徒が抜け、都立中高一貫校が抜けた後の平均値です。従来の高校受験(公立中学生対象)偏差値では45程度だと思います。「授業の速度は遅くなったが、生徒は自分のレベルにあった授業を受けることができて良いのでは?現在の公立中学校は能力の高い生徒が学力を大きく伸ばす場ではない。」と現場の教師は著者にコメントしています。
偏差値45をターゲットに授業を行っていると考えるとかなり心配な気持ちになります。
ひかりんパパの年代の偏差値45の高校では、2年生に進級できる割合は2/3程度、残りはすべて退学するか、定時制に転校していました。
3.まとめ
いかがだったでしょうか?
私立中高一貫校、私立大学付属校、都立中高一貫教育校と比較すると、公立中学校の立ち位置の難しさが伝わってきます。
しかしながら、公立中学校には新しい風が吹き始めています。その風は、工藤校長が2014年に赴任した千代田区立麹町中学校から起こり、全国の公立中学校に届き始めています。
宿題なし、担任なし、定期テストを撤廃しました。
宿題と定期テストは学力定着の「手段」にすぎません。代わりに単元ごとに小テストを行い、合格点に至らない生徒には再チャレンジを認めます。知っていること、できることの宿題をこなすことは時間の無駄です。また、苦手な先生が「担任」になってしまったら、生徒は必要な相談をしづらくなります。代わりに学年を担当する先生と配置して、気軽に相談しやすい環境を作ります。同じ発想で髪型も自由です。
工藤校長は生徒に自律を求めています。
生徒に自由を与えます。自分で考え、行動し、その結果に責任を持つことを求められます。代表的な例は、「運動会の競技内容を生徒が決めて実行する」、「修学旅行の日程を旅行代理店と生徒が打ち合わせて決める」といったあたりでしょう。
麹町中学校はその立地から経済的に恵まれた生徒が多く、しかも中学受験失敗組が多く在籍しています。
元々の学力が高いとの指摘もあろうかと思います。しかしながら、公立中学校の実態は、都立中高一貫校に生徒を取られ、従来よりも生徒の学力は低下しています。そんな公立中学校で学力だけを伸ばす取り組みではなく、精神面の成長を促す取り組みはもっと評価されても良いと思います。
かなり長くなってしまいましたが、最後にこの記事でご紹介した書籍をご案内させていただきます。機会があれば読んでいただければと思います。